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第20回 モリケータ、人生賭けて薦めます! FIAT Multipla


【森 慶太】
1966年静岡県生まれ。
筑波大卒。
自動車雑誌編集部を経て96年からフリーランスに。
著書に、「乗れるクルマ、乗ってはいけないクルマ」(三笠書房) 「『中古車選び』これだけは知っておけ!」(三笠書房) 「買って得するクルマ損するクルマ―新車購入全371台徹底ガイド」 (講談社)他多数。最近、子供も生まれ、家も建て、ますます精力的に世界中を飛び回っている。


 22歳で免許を取り、自動車雑誌『NAVI』に入社したときにはバリバリの若葉マーク。
廃車寸前の86レビンで夜毎筑波パープルラインに通い、みるみる運転の腕前を上げていった若き日の森慶太は、それから10余年、今や気鋭の自動車ジャーナリスト。
明快な論点、みずみずしい視点、の森慶太が駆る。イタリア車ははたしてどうなのか。


ガレージに入るかどうか、これが唯一の心配事

 フィアット・ムルティプラは素晴らしい、日本仕様も、という話を書こうとしてます。ヘンなクルマだから応援するとか、あるいはイタ車だから、フィアットだからホメるとか、そういうんでは全然なしにムルチはホントにイイ。

 これ、試乗してホメまくらないヤツはどうかしてるよ(雑誌の試乗記でホメたおしてないヤツの原稿はこれから先信用しないほうがいいでしょう)。ミネストローネで顔洗って人生出直したほうがいい。少なくとも私は「あーこれはまさに俺のために作られたようなクルマだ」って思ったし、また、心のヒネクレてない多くのクルマ好きの皆さんも乗って同じような感想をもつと思う。
 

 さて、どっからホメるか。
 まず、横3人掛け×2列=合計6つのシートの、どこに座ってもまったく平等な、かつ素晴らしい掛け心地。冗談抜き、どれでもいいからシートをひとつ取り出してそれに座っただけでも感激できる。ヘッドレストやシートベルト関連の安全性も高いし、また作りもいい。スパシオでもステップワゴンでもナンでもいいけど、国産のこのテのクルマのシートが100円ショップの商品に思えるガッチリ度。ホレボレ。

 次に、これまた冗談抜きに抜群の取りまわし。ちょっとクルマに詳しい人だとカタログの「全幅1870mm」を見ただけで「うわこら狭いとこタイヘンだ」と思うだろうけど、実際はかなり違う。ムルチの場合ドライバーの乗車位置が側面の壁ギリでしかもかなり高いから、1870mmをキッチリ見切ることができる。理由はそれだけじゃないんだろうけど、とにかくヘタな5ナンバー車より狭いとこはラク。全長は4005mmで、これはもう攻撃的に短いし。だってゴルフ2と同じってことだもん実質。私なんか、走りはじめて3分後には勝手知ったるマイカーみたいな感じで都内の狭い道バンバン走っておりましたですよ。それこそ、ハナ歌まじりで(強がりじゃないですよ)。

 なお、運転席からボンネットはまったく見えない。見えないけど、だからといって不安になることはなかった。おそらくこれ、ダッシュボードやAピラーまわりの形状がいいからだと思う。 一見して奇をてらってるだけに思える操作類のデザインも、使ってみると実に具合がいい。シフトレバーやなんかもふくめて、操作する必要のあるモロモロがキュッとドライバーの周囲に集められている(操作パネルがナナメ上を向いているからますますいい)。ほぼ同じ理由から、ダダッ広い空間にポツンと置き去りにされたみたいな居心地の違和感もない(それでいて嬉しい広さ感はバリバリ)。

とにかくこれ、秀逸なデザインだと思う。外観も、ヘンという人は多いけどいわゆる面質、デザイナーなんかがよく使う言葉なんだけど、外板のビミョーな抑揚の感じのデキのレベルもすごく高い。あと、側面の壁がほぼ直立だと人間の目にはむしろ通天閣の展望台状に上広がりに見えちゃいがちなんだけど(日産キューブはそのケース)、ムルチはそのへんもうまーくやっている。プロのワザ。

 ちなみにオータ社長によると、ムルチはイタリアでタクシーとして活躍しているらしい。いわれてみれば最高の使い途。おそらくフィアットも、そっち方面を最初からアタマに入れてたんではないか。そもそも、取りまわしのダメなクルマだったらイタリアでタクシーになんぞ使われないですよ。

 だからそう、ムルチに興味はあるけど取りまわし関係が心配だっていう人が気にするべきはほぼ一点だけ。それはガレージに入るかどうかっていうことですね(露天のパーキングロットはほとんど大丈夫)。あと、道やなんかのインフラがすべて軽自動車のサイズ前提で出来上がってるような地域では苦しいかもしれない。ひょっとして。さすがに、絶対的な横方向のデカさは厳然としてあるから。1870mmってのはあくまで車両本体だけの幅で、ムルチの場合そっから左右にドアミラーがデーンと出てるし。


燃費は高速巡航で14km/l

 でそれからエンジン。車重1360kgに対して排気量1.6リッターでマトモに走るんかいなと思ったら、これが走るんだ。めっちゃめちゃしっかり。故ブラビッシモ用と同じ、そういう意味では古い設計のユニットなんだけど、とにかく実用域トルクのカタマリ。それでいて、上まで回しても感触はけっこうスイート。ドロ〜ン系じゃないのよ全然。もちろん、絶対的には別に速くないけど。たいして。


 5速で100km/h出したときのエンジン回転数が3000rpmちょい、っていうのは、これは車重と排気量のバランスを考えると必ずしも大げさなローギアードではないと思う。いっちゃえば、ユーノス・ロードスター(車重1トンに対して排気量1.6)とおんなじような数字だから。あるいは、ルーテシアの1.2(最近入ったヤツ)も車重990kgで5速の100km/hがそれくらいだし。やっぱ、エンジンがいいんだよ。アイドリング+ぐらいの回転数でもすごいしっかり粘るし。

 それと、感心したのは各段のギア比の並べかた。カタログで数字をチェックしたりはしてないけれど、簡単にいってステップアップ比がめちゃめちゃ小さい。いわゆるクロースレシオ。相対的に重たいクルマを同じく相対的にちっちゃい排気量のエンジンでキモチよく走らすためにはどうするといいか、ってことをフィアットはちゃーんとわかってる。

 このへん実はギア比配分だけでは十分ではなくて、ムルチの場合はMTの操作がめちゃめちゃやりやすくてかつ素早い、というところも大きい。たとえば急な上り坂の発進なんかを想像してもらうとわかりやすいんだけど、エンジン排気量がちっちゃくて車重の重たいクルマ(典型的なとこでは過積載の小型トラックあたり)だと、めちゃめちゃ低いローでガーッと引っ張ったあと2速へ入れたときにツラいじゃないですか。というのは、シフトが素早くできなくてモタモタしてる間にエンジン回転が下がっちゃってしかも上り坂だから車速の落ちも速くて、2速にエンゲージしたはいいけどエンジン回転はおいしいトルクの出る領域を外れちゃっててショックは出るし登ってかないし云々……ていう。そういうことが、ムルチの場合は全然ない。駆動系のバックラッシュ(ガタ打ち)とかジャラジャラ騒音も全然出ないし。すごいなこれ。

 簡単にいって、ムルチはめちゃめちゃ運転しやすい。「こんな運転しやすいクルマ乗ってて、俺はそのうち運転がヘタになっちゃうんではないか?」って心配になるくらい運転しやすくて、しかもめっちゃめちゃ楽しい。ナンでもいいから用事つくって出かけたくなる。「買いモノとか、ないの? オリーブオイルがきれかかってるっていってたじゃん」とか。グータラ粗大ゴミ亭主のモリケータが一転、って感じでもうねえ。
運転しやすいクルマとして、私のなかではこれまでゴルフ2のCLIのMTがダントツのキングだった。で、ムルチの運転しやすさはそれに匹敵するレベルにある。  

 あとムルチ、走りの安心感がエラいこと高い。オルタナティブ動力機関のメカを収容するためのガランドウが床下にあるって意味ではベンツAクラスなんかといっしょで、そのへん乗る前はけっこう不安だったんだけど杞憂だった。ワイドボディを利したワイドトレッドも効いてるのかもしらんけど、とにかくバッチリ。グラッと系のコワさがない。笹目二朗さんいうところのロールセンターが高い系、でしょうこれは。ホイールベース/トレッド比でいえばむしろエンスーなクチで、実際走っててもそういう感じの嬉しさがある。

 それから、ムルチは高速でけっこう伸びる。スルスルーッと。つまり、空力性能が高い。あんな見た目で、っていうか、あの二段ボンネット(?)は実は空力対策としても有効みたい。今回広報車を借りて500kmほど乗ったんだけど、そのうち高速道路約320km+市街地約40kmの360km区間はオンボードコンピューターによると平均速度96km/hで100kmあたりの燃料消費量が8.5?。つまり約11.8km/?。並行ムルチに毎日乗ってる知り合いによると、おとなしく流せば高速巡航での14km/?はフツーらしい。ちなみに燃料タンク容量は61?とかだから、満タンからスタートして無給油800kmはまったく現実的ってことですな。

 


イロモノとは対極にあるマジメさ
 

 というわけでムルチ君、少しでも気になる人はゼヒとも一度試乗してみるべきだと思う(どこいきゃ乗れるのかっていう問題はあるにせよ)。オートマ限定免許の人はアレだけど、ペーパーMTドライバーだったらむしろドシドシ乗ったほうがいい。「マニュアルシフトってこんなに運転しやすかったんだぁ」って驚けるから。それと、一家に1台のマイカーとしてムルチはめちゃめちゃ役に立つし。あとそう、右ハンの運転環境もまったく問題なし。並行モノにさんざん乗ったあとだったんで乗る前は心配だったんだけど、ヨカッタヨカッタ。

 なにより、日本で自動車関係の仕事をしてる人はムルチを体験しないといけない。体験して、ゼヒともうなだれてください。あるいは、いいクルマ観を根底から改めてください。こんなにマジメな小型ミニバン、ちょっとないよ。少なくとも、国産にはいっこもない。

 そうだそう。私がムルチに関していちばんいいたいヒトコトがそれ。つまりマジメってことですよ。空間設計にせよ走りにせよ、6人乗りの小型ミニバンをマジメに作ったらこうなった、っていうホントそのまんまのクルマだから。ムルチって。マジメにやってるとバカだと思われる状況がいま支配的じゃないですか。クルマにかぎらず。ムルチも一般的にはバカ系イロモノ系だと思われてるみたいだけど全然違う。断じて違う。トヨタ車みたいなのが自動車におけるマジメの典型だなんて思ってたら、それ全然おおハズレだからね。

 なんか今回、私怒ってますよ。ムルチ君がマジメなクルマだってことが日本で認められればいいけれど、でもそうなることはたぶんないだろうって思ってるから。イタリアらしい遊びゴコロとか、そういうんじゃ全然ないから。ムルチは。乗ったことないシロートさんが「あー」とかいって指さして笑うのは、それはむしろウェルカム。

 でも、クルマ関係の原稿書いてメシ食ってるヤツらがそれと変わらんないようなレベルの認識でインプレ書きやがったらタダじゃおかねえ、みたいな。

 いやまあ、実際はそれでもタダおくんですけどね。タダおくんだけど、「あーコイツ、バカでえ」っていう烙印を心のなかでおしてやる。そういう意味でも自動車マスコミ界におけるムルチの評価はすごい楽しみ。



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