イタリア自動車雑貨店
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 イタリアが好きだ。イタリアに行きたい。そんな想いがふくらんで、いつしかそこでの暮らしを夢みるようになっていった……。待っていたものはなんだったのか。当店スタッフ山崎基晋は、京都での生活をリセットして、憧れの国イタリアへ飛んだ……。

第2回 イタリア到着の夜は更ける



さあ、イタリアに着いた

 十数時間に及ぶ長いフライト、その間一睡もしていなかった。ビールもワインもどれぐらい飲んだか分からない。機内に持ち込んだ文庫本を読もうとしても、目は活字を追えなかった。何本か見た映画の内容、そんなもの覚えちゃいない。それもこれも、ただひとつのことが重くのしかかっていたから。これからイタリアで始まる生活。それがどのようになるのか、ただただ不安で緊張していた。これは観光旅行じゃないんだ。

 運転手はどこにいるんだろう。マルペンサ空港到着ロビーを出て、予約しておいたタクシーを探した。到着ロビーは行き先を求めるツーリストで騒々しかった。今日のために6ヶ月も前から到着便の時間に合わせタクシーを予約した。アパートの住所、電話番号、大家の名前だって告げておいた。滑稽なほどに慎重な自分。

 でも、そういえば、と思い当たって急に冷静になった。待ち合わせの場所を聞いていない。半年も前から準備しておいたのに、いちばん肝心なことを確認していなかった。滑稽なほどに愚かな自分。到着ロビーの騒々しさのなかで、冷静で愚かな自分が右往左往している。とにかく気分を変えよう。外に出てタバコを吸おう。

 夕焼けが空港の建物を照らしていた。秋の風が吹いていた。今日、アパートにたどり着けるのだろうか。イタリアでの生活は本当に始まるのだろうか。タバコを吸いながら、そんな漠とした不安に次から次に襲われた。いや、いや、今はそんなことに浸っているときじゃないんだ。とにかく運転手を探さなきゃならない。ロビーに戻り、とえあえずプラスティック製のスツールに腰掛け、もう一度広いロビーの様子を伺ってみた。到着ロビーに溢れていたツーリストは、もうまばらになっていた。

 両替カウンターの横。もしかしたら、と思って目を凝らした。プラカードを持っている白髪の老人。スツールから腰を上げ、重い荷物を引きずって彼のほうに近づいていった。プラカードの文字、Motokuni Yamazakiと読める。ああ、この人か、この人なんだ。ああ、良かった。やっぱり6ヶ月前に予約しておいて良かった。慎重でよかったんだ。ほっと胸を撫で下ろすと同時に、これからのイタリアでの生活もすべてうまくいく、という思いが、心のなかいっぱいに広がった。きっとうまくいく。だいじょうぶだ。ぜんぶうまくいくぞ。

 まだ、新車の香りのするLanciaは、滑稽なほどに楽観的な僕を乗せて、ミラノ市街に向かって出発した。

祝杯の赤ワイン

 インターフォンを何度も押してるのに全く反応がない。スーツケースを片手にリュックサックを背負ってアパートのドアの前にいる僕を、通行人やアパートのベランダから顔を出している人たちが不審な目で見ている。もう陽が沈む。辺りがすこしずつ暗くなってきた。さっきまでの楽観的な気分から、一挙に不安のどん底に落とされたような気になってくる。暗いのは苦手だ。どうなってるんだ。連絡しておいたじゃないか。

 どうやらドアの向こうから人が出てくる気配はなかった。メインエントランスのドアから離れてアパート全体の姿を眺めてみる。こげ茶色の外壁。全部で20世帯は暮らしているだろうか。日本にいるときに入学手続きをした語学学校が斡旋してくれたそのアパートは、外観から想像するかぎり、期待以上に立派なものだった。それにしても誰も待ってないじゃないか。イライラする気持で何度も通りの方を振り返ってみる。ふと気づくと、遠くから背の高い短髪の白人がこちらに向かって駆け足でやってきていた。

 僕の前までくると、青い目を大きく開き、私はワグナーです、と声をかけてきた。Piacere(はじめまして)と挨拶をすると、にっこり微笑みながら、イタリア語が分かるのか、と握手を求めてきた。イタリア語はそれを含めてほんの少ししか知らなかったから、それ以上複雑な話になるのを避けようと曖昧に笑っていた。それにしても、ようやく部屋に入れる。良かった。

 彼はメインエントランスのガラス製の大きな扉に鍵を差し込み、何も言わず僕の重いスーツケースをつかんで、白い大理石の階段へと進んだ。力強くどんどん上って行く。3階に到着するとポケ ットから鍵を取り出し、2つある鍵穴とそれぞれの鍵を僕に見せた。鍵は何回も回してください。それから、鍵を開けるにはちょっと力が必要ですよ、と身振りを交えて僕に告げた。

  もう早く部屋の中を見たくて彼の説明がもどかしかった。そしてようやく扉が開いた。最初に、薄いピンク色のタイルが敷き詰められた、リビングキッチンの床が目に入ってきた。それから、赤いストライプの大きなソファー。重厚で古そうな木製の丸いテーブル。壁には白い食器棚もある。すべてとても清潔で、きれいに整理されていた。このスペースは共有スペースで、僕のほかに2人の住人が一緒に使うことになっていた。

 リビングから自分の部屋に入る。8畳ほどの広さの部屋の中央に、小さなシングルベッドがあった。そして窓際にはそのベッドよりも大きな鏡が立てかけてある。ガラスの破片をチェーンでつなげたような、そんなシャンデリアも天井でキラキラしていた。これで1ヶ月約4万円ほど。いいな。この部屋か。ここがこれからの生活の拠点だ。ここで新しい生活を作っていくんだ。

 まだ、心も体も緊張していた。そうだ、祝杯のワインを飲もう。時計を見るともう8時前。急いでスーパーマーケットに向かった。買い物カートにコインを入れて店内を進んでいくと、大きなカゴの中にたくさんのワインが積んであるのを見つけた。Rosso(赤)のラベルを確認し、レジカウンターで代金を支払い、急いでアパートの部屋へ戻った。

 買ってきた赤ワインには、コルクの栓ではなく、アルミのふたが付いていた。少し変だなと思いながらそのアルミのふたを開けた。その瞬間、すっぱい匂いがあたりに充満した。ビンのラベルをもう一度確認する。Aceto Rossoとある。辞書をみると、“ぶどうで作られた酢”と書かれていた……。あ〜あ。



(つづく)




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