イタリア自動車雑貨店
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 イタリアが好きだ。イタリアに行きたい。そんな想いがふくらんで、いつしかそこでの暮らしを夢みるようになっていった……。待っていたものはなんだったのか。当店スタッフ山崎基晋は、京都での生活をリセットして、憧れの国イタリアへ飛んだ……。

第3回 ここに来た理由



ふたりの同居人

 3階にある僕の部屋のベランダからは外の様子がよく見渡せた。イタリアに到着した翌日の土曜日、外に出るのがおっくうで、窓を開け一日中ぼんやりと人々の行きかう様子を眺めていた。道路を挟んだ向かい側にはピッツェリア、レンタルビデオ店、TIMショップが立並び、TIMのショールームの前には頻繁に人々が立ち止まり、最新の携帯電話を熱心にチェックしていた。

日本ほど高機能の携帯電話はないし、値段も驚くほど高いけれど、おしゃべりが好きなイタリア人にとって、携帯電話は欠くことのできないコミュニケーションの道具なのだ。のんびりとした土曜日の、ゆっくりとした時間が、僕の目の前を流れていた。

僕の部屋には二人の同居人がいた。同居人と言っても、プライベートスペースはそれぞれに用意されていたので、リビングとダイニングを共有しているだけだった。ひとりは、イタリアへ移住してきて10年になるブラジル人のワグナー。彼は水泳のインストラクターともうひとつ別の仕事を掛け持ちしていた。

昼夜の別なく働いているものだから、僕がここに住んでいる間、めったに見かけることもなかったけど、休日の朝、リビングへ行くといつも床にマットレスを敷き眠っていた。彼がそこで寝返りを打つたびに、背中にある大きな太陽と月の刺青が見えて、それがなんだかブラジルの力強さのようなものを僕に感じさせた。

そしてもう一人の同居人は台湾人のバレーリオ。もちろん本名はきちんとした中国名だけれど、僕を含めてだれもそれを覚えられなかった。だから、語学学校の先生が彼にACミランのGKと同じ<バレーリオ>という名前を与え、それが彼の通称だった。僕もこれから彼と同じ語学学校に通うことになっていた。

僕が使っている部屋を出ると小さな書斎があった。その前が彼の使っている部屋で、彼はいつもその扉を開けたままにしていた。たぶんその理由は、天井に照明がついていなくて薄暗かったからだと思う。勉強机の脇にある小さな電気スタンドだけが、彼の持っている唯一の明かりだった。


バレーリオの場合

  開け放たれた部屋の扉から見えるバレーリオの机の上には、ピアノの前に座っている美しい女性の写真がポツンと立てかけてあった。時々深夜に、共同の書斎の机の上にある共用電話で、バレーリオが小声で話をしていた。たぶんその写真の女性への電話だったのだろう。彼の生まれた国のその言葉は、受話器の前でとても悲しそうなトーンを帯びていた。何を話しているかは分からなかったけど、こっちまで悲しくなるような力のない言葉だった。

その土曜日の夜、バレーリオとアパート周辺の町を歩いた。昼間とはうってかわって通りには人影がなく、オレンジ色の街灯の光が、通りをびっしりと埋める路上駐車されたクルマを照らしていた。まだイタリア滞在2日目にしか過ぎない僕を、バレーリオは気遣ってくれたんだと思う。彼がいつも買い物をするスーパーマーケットや、安く食事の出来る中華レストランを歩きながら紹介してくれた。

そうやってアパートの周辺をぐるぐる歩いて、そのあいだ僕たちふたりは共通の言葉であるイタリア語とバレーリオの操る妙な日本語で話をした。もっとも、イタリア語だって心許なかったから、端で聞いていたら、さっぱりわけのわからない会話だったと思う。

バレーリオは自分がイタリアに来た理由を話し始めた。彼の父はドアノブを製造販売する会社を台湾で経営しているとのことだった。だから、ドアノブのデザインとロックシステムのことを学ぶためにイタリアに来たと、僕の目を見て力強くそう言った。僕はなぜイタリアでないといけないのかという疑問をもったけど、僕たちの共通の言葉であるイタリア語では細かい話まで理解しあうことができなかった。後になって分かったことだが、イタリアでは盗難事件が多く、そのためにあらゆるドアロックのシステムが頑丈にできている、という極めて現実的な理由がそこにはあるのだった。

そう言われて注意して見ていると、イタリアでは鍵が複数ついているドアがとても多かった。イタリアとドアロックのシステムなんて、それまで結び付けて考えたこともなかったので、とても新鮮な感じがした。世界にはいろいろな人がいて、いろいろな仕事があるんだと、彼の話を聞きながら改めてそんなことを思っていた。じゃあ、自分はどうなんだろう。僕自身はここに何をしに来たんだろう。とりあえずイタリア語を習得するという目標は掲げてはいたものの、その先はどうするのか。明確な目的を持ってイタリアにやって来たこのバレーリオの話は、僕に根本的な問いを投げかけるのだった。



(つづく)




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