|
|
塗っちゃいました
2日間降り続いた雨がようやく上がった12月9日の土曜日。金曜日が祝日なので3日間の連休という人が多く、クリスマスシーズンのこの時期、連休の買い物客を当て込んで、チェントロのお店はどこも大忙しを予想しています。が、実際は今年の「歳末商戦」はさえないらしいです。来年からの増税、ガンガン進行する物価高を背景に、クリスマスを間近に控えても人々の財布のひもは固く閉まったままだからです。
ドメニコ君の働くカーショップも、せっかくの土曜日だというのに朝から客足はさっぱりです。お客さんがこないと彼はケータイのメールなんかチェックしていて、自ら仕事を見つけて働くなんてことはまずありません。何もしなくていいの?と聞くと、やることがないよ、と肩をすくめます。まあ、僕が見るところでは、掃除だってあるし、不足してる工具の調達に走ったりと、やることはじゅうぶんにあると思うのですが。なにしろ、お客さんのクルマに部品を取り付けたりする際に、いつも3軒となりの電機屋にコンピネーション・レンチ借りに行ってるのですから。
ま、そんなこんなの暇な土曜日、待望のお客さん、ゴルフに乗ったお客さんがやってきました。ブレンボの赤いキャリパーをしばらく見ていたのですが、値段を聞いてあっさりと諦めてしまいました。と、ドメニコ曰く、塗れば安く済むよ。するとそのお客さんは、塗ってくれるならそれでもいいや、とサラっと言いました。ドメニコ君、一瞬詰まりましたが、この暇で暇でしょうがない土曜日、雨も上がったしイイヤと思ったのでしょう、OK、今からやろう、ということになりました。
タイヤを外しました。ブレーキダストで真っ黒のキャリパーが現れます。脱脂剤を使うでもなく、布でゴシゴシ拭きとっていきます。お客さんも見てるのですが、別に何も言いません。そんなんでそのペンキはちゃんと乗るのか、と見ていると、何度も使って先が固まってしまった刷毛、というより筆を取り出して、早速塗り始めました。はじめのうちは塗料をはじいてしまって乗りが悪かったのですが、これでもかの厚塗りでやがて真っ赤になっていきました。キャリパーじゃないところまで塗っていましたが、別にこれにもお客さんは何も言わなかったので、赤いのがホイールの隙間から見えればそれでOKということなのでしょう。ひとつ仕上げるのに40分かかっていました。
万国共通でイタリアの若い人もクルマは大好きです。もちろん自分のクルマを自分だけの仕様にモディファイしたいというのも同じです。がしかし、日本の若者のように自分で自由に使えるほどに所得がありませんから、必然的に「安く上げる」方法が主流になります。たとえば新品のアルミホイールを買える若い人なんてそういません。クルマだって中古の、しかもベーシックグレードを買うわけですから、ホイールを換えたいとなれば、方法はひとつ、鉄のホイールをアルミ風に「塗る」わけです。何十年も前の日本もアルミホイールには手が出ないので溶接ホイール、そしてそれを塗る、なんてことが一般的だったことがありました。幸せな光景です。給料が上がったら赤いキャリパーを買おう、OZのアルミを買おう、なんて手についたペンキを見ながら夢みています。
|
10:48 by サンサロ |
|
|