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BECKER君、現る!
カーナビを買った。ドイツ、BECKER社製の本体一体式ポータブルタイプ。知り合いの店でディスカウントしてもらって390ユーロで手に入れた。日本のカーナビの機能と比べたらそれはお話にならないくらいのオモチャだけど、知らない土地に行くのに地図を見るよりはましだろう、という程度の気持で買ってみた。でも、390ユーロってのは今ほとんど6万円。決して安い買い物じゃない。
ということでそのカーナビをお供に9月6日朝、オーストリアに向かった。そう、このカーナビ、ヨーロッパ37カ国の道を知っている。シガライターから電源を取り、ダッシュボード上に吸盤でセットする。モニターのサイズは縦55mm、横75mmほど。小さい。スイッチを入れ、目的地オーストリアの住所を入力すると、10秒ほどで画面が地図に切り替わり、そして目的地までの総走行距離、所要時間が表示された。808km。8時間20分。へぇ、ウソでも凄いじゃん。ちょっと感動する。
さて、走り出してみると、予想に反してこれがなかなか使えるのだ。音声案内のタイミングも、モニターのスクロールスピードも、十分にカーナビしている。故意に案内ルートを外れて走っても、ルートの再検索もなかなか速い。問題はGPSを時にキャッチできなくなることで、そうするとじっと固まってしまう。イタリア、トリノからオーストリアへは国境付近を中心に頻繁にトンネルを抜けていくのだけど、そのたびにBECKER君は休憩を取る。
で、着いた。無事、オーストリアに。特に目的地の市内に入ってからは、BECKER君、めざましい活躍ぶりで、セットしておいたホテルまで従順な下僕になって正確に案内してくれた。所要時間にもほとんど狂いなし。もう、この1回だけで僕はもとを取ったようないい気持である。やっぱりねぇ、ドイツ製だからでしょうか。シンプルな機能しか搭載していないけど、カーナビはこれで十分、と質実剛健な説得力だ。これがイタリア製だったら、散々寄り道させられた挙句、明日出直そう、と最後には家に戻ってきちゃったりしてね、なんて結構あり得るかも。
でも、ちょっと思うなぁ。僕はイタリアの道を地図なしで走れるようになるのにたっぷり5年はかかった。なのにこんなカーナビひとつで、きょうやって来たってどこにだって行ける。ちょっと悔しい。悔しいからトリノ市内を走るときはBECKER君を無視して、自分が心細さと戦いながら覚えた道を行く。そんなちっぽけな矜持が、それはほんとにとってもちっぽけなんだけど、いつだって僕が友としてきたものだ。BECKER君とも、もちろん友達にはなれたけど。
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10:59 by サンサロ |
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