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曲がってるよ
LANCIA 100周年の熱気、いまだ冷めやらぬトリノから、きょうはちょっとした「事件」の顛末をお知らせします。さて、さて、写真のメダル、プレキシガラスにきれいに埋め込まれ、とあるエンブレム工房に本日9月29日納品されました。埋め込む作業だけ外注に出していたんですね。ちょっと写真が悪いのですが、見えるでしょうか。ルカ・モンテゼモロの名前があります。そうです、これはLANCIA 100周年を祝して、モンテゼモロに納められる極めつけの貴重な逸品なのです。
“尊敬と感謝の念を込めて支援者ルカ・コルデロ・ディ・モンテゼモロに” と刻まれています。
箱から出した瞬間その場にいたみんなから期せずして歓声があがりました。それほど素晴らしい出来ばえです。僕なんかすぐに「これ欲しいなぁ」という思いがふつふつと湧き上がりましたが、これだけはどうにもなりません。何しろ、これ1点のみ、思いを飲み込んでグッと我慢です。が、しかし、その時、僕は気づいたのです。メダルが、特に右端のメダルが曲がって付いていることに。
イタリア人ですから、仔細に見ることもせず、もうこの逸品をサカナにああでもない、こうでもないとオシャベリに夢中になってます。なかなか言葉をはさむタイミングがありません。が、一瞬の沈黙を逃さず、僕は言いました。これ、曲がってるよ。
全員の目が再びメダルに注がれ、ひとりひとりじっくり検分します。そして、そのあとにはそれまでの盛り上がり方が幻だったかのような重い沈黙に包まれたのでした。なかの一人がメダルを左側に回転させようと手を出しましたが、回るわけはありません。プレキシガラスには穴が空けられ、メダルから出ているボルトでしっかりと固定されているのです。しかもよく見ると、真ん中のメダルも微妙に曲がっています。
この種のことを、イタリア自動車雑貨店はイヤというほど経験しています。エンブレムが曲がって付いてるなんて頻発することです。ですから、こういうものを見ると、全体を眺めるより先に真っ直ぐ付くべきものが真っ直ぐ付いているかどうか、何よりそこに目が行きます。ボタンは付いているか、ファスナーはスムーズに上げ下ろしできるか、時計の針は動いているか、ライトは正常に点灯するか、なんていう信じられないほど基本的なことを再検品するのと同様、これはイタリア人を相手に仕事をする上での必須事項なのです。
すぐに、善後策が話し合われました。が、なんとこの日の午後にLANCIA CLUBに納品しなければならないとのことです。そしてLANCIA CLUBの代表がこれを携えてモンテゼモロを訪れることになっているそうです。やり直しの時間、ありません。メダルの傍から一人去り、また一人去り、最後には勤続35年の女性だけが残りました。着ていたTシャツの裾でプレキシ・ガラスに付いたみんなの指の跡を拭いています。Tシャツで拭くんですね、イタリア人は。そして彼女は言いました。モンテゼモロはこういうのたくさん持ってるから、そんなにじっくりは見ないのよ。
万事イタリアはこの調子です。その鷹揚さにたくさん助けられましたが、これから先のこと考えると、やっぱりもうちょっとしっかりやってもらいたいです。みなさんのクルマのエンブレム、曲がって付いてないですか? よぉーく、見てください。
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11:19 by サンサロ |
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